ELISPOTとは
ELISPOTアッセイは、シングルセル単位で細胞の分泌活性を検出する極めて高感度な手法です。
用語について
Enzyme-
Linked
Immunosorbent
Spot assay: ELISPOT assay-エリスポット アッセイ
→ 酵素結合免疫吸着スポットアッセイ
蛍光色素を利用したELISPOTは
FluoroSpot-フルオロスポットと呼ばれ、ELISPOTおよびFluoroSpotアッセイをCTL社では総称して
ImmunoSpot®-イムノスポット アッセイと呼びます。
対象となるサンプルは何か

主に、サイトカインや抗体を分泌する免疫細胞を対象としていますが、実際に使用するサンプルは、全血から調製した様々な血球細胞から構成される細胞を使用します。
T細胞(CD4+細胞/CD8+細胞)、B細胞、NK細胞、樹状細胞などターゲット細胞を取り巻く近傍の細胞もそのままの環境でアッセイを行います。
多く使用されるサンプルは、フレッシュなヒト末梢血単核球(PBMC)や
凍結保存されたPBMC、マウス脾臓細胞等です。
他の手法で見られるような、細胞固定や細胞内サイトカイン染色、透過処理等の処理はELISPOTには不要です。未処理の生細胞の分泌活性を培養プレート上で検出します。
何が分かるのか
対象細胞の
存在頻度と
分泌活性をシングルセル単位で検出することが可能です。
T細胞ELISPOTの場合
スポット数:細胞集団に含まれる抗原特異的T細胞の存在頻度
スポットサイズ:サイトカイン分泌活性の高さ
マルチプレックス:複数のサイトカインを放出している多機能T細胞の検出
B細胞ELISPOTの場合
スポット数:細胞集団に含まれる抗体産生細胞(ASC)の存在頻度、または抗原特異的ASCの存在頻度、メモリーB細胞プールの規模の解析
スポットサイズ:抗体分泌活性の高さ
マルチプレックス:各メモリー細胞によって産生される抗体クラス/サブクラスの調査
B細胞ELISPOTの詳細>>
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ターゲットの検出方法は何か

ターゲットの特異的抗体と検出酵素+基質反応による発色で検出します。
CTLでは、Alkaline Phosphatase(AP, アルカリフォスファターゼ)と基質はCTL-TrueBlue™を主に採用しております。
検出は、ELISPOT専用の96ウェルメンブレンプレート上で行われます。このプレートの底はPVDFメンブレンが素材となっており、分泌細胞が存在した痕跡が、メンブレンに吸着した色素の「スポット」としてウェル内に残ります。
詳細は
測定原理へ
FluoroSpotは蛍光標識抗体による検出方式を利用しています。
ELISPOTに必要な設備および試薬と器具
<設備>
・クリーンベンチ(安全キャビネット)
・CO2インキュベーター
・遠心分離器
・冷蔵庫
・液体窒素細胞保存容器(凍結細胞を使用する場合)
・
ELISPOTアナライザー(または96ウェルプレートを撮影できるイメージングシステムとスポットカウントが可能なソフトウェアシステム)
<試薬と器具>
・ピペットおよびピペッター
・
ELISPOTキット(または対応するプレート、抗体、試薬類)
・細胞
・培地
・細胞を刺激するための抗原(任意)
T細胞ポジティブコントロール
ヒトの抗原特異的T細胞モニタリングアッセイにおいて、CTL社ではT細胞と抗原提示細胞どちらも評価できるポジティブコントロールを推奨します。
マイトジェン刺激として知られるPMA/IonomycinやPHAは非特異的な非常に強い刺激であり、T細胞から強制的にサイトカインを放出させますが抗原特異的T細胞反応とは異なる応答となります。
また、Anti-CD3抗体はポリクローナルCD4+およびCD8+ T細胞刺激因子であり、汎用的に使用されていますが、通常のT細胞活性化経路とは異なります。
T細胞免疫モニタリングには、APCの機能を含むPBMCにおけるCD4+またはCD8+ T細胞検出のさまざまな要件を評価する生理学的T細胞活性化の試験に適した抗原が必要です。
※キットには含まれません。用途に合わせて別途ご用意ください。
【CD4活性化用タンパク質抗原ミックス】 |
推奨 CPI Positive control |
幅広い人種由来の細胞について、抗原提示細胞(APC)による処理と抗原提示機能が不随する活性化を評価できます。 #CTL-CPI-001 CPI Positive control, 1.0 ml #CTL-CPI-005 CPI Positive control, 0.5 ml |
【CD8活性化用タンパク質抗原ミックス】 |
推奨 CERI-MHC Class I Control Peptide Pool |
従来のCEF ペプチドプールと比較して幅広いエピトープをカバーし、様々な人種由来の細胞から応答が得られます。 #CTL-CERI-300 CERI-MHC Class I Control Peptide Pool |
まとめ

ELISPOTアッセイは、シングルセル単位で細胞の分泌活性を検出する極めて高感度な手法です。
ELISPOTでは「細胞」を測定対象にしてアッセイ用プレート上で直接分泌された分子はキャプチャーされ、発色基質を添加することでキャプチャーされた分子は「スポット」として発色されます。
従ってELISPOTは、分泌細胞の頻度を「スポット数」として定性的に評価できる手法です。各スポットのサイズは単一の細胞から分泌された分子の量を表しているため、分泌細胞の活性評価と分泌細胞数の増減を一度に評価することが可能です。
ELISPOTアッセイの測定原理
1. キャプチャー抗体をコート |
2. 抗原添加し培養 -緑:抗原特異的細胞 -サイトカインが分泌される |
3. 細胞除去 -分泌物はキャプチャー抗体に結合した状態 |
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4. 検出抗体添加 -Biラベル抗体を使用 |
5. SA-酵素添加 -Bi/SA反応 |
6. 発色基質添加 -プレート底に色素のスポットが出来る |
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7. 反応後の1ウェル |
各ウェル画像を撮影/解析 |
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ELISPOTアッセイのフィールド
トピックス別論文検索ページ>>(CTLのサイトへ移動します)
感染症およびワクチン研究

・ワクチン接種前後で抗原に反応する免疫応答の変化を調べる
・アジュバント評価
・ワクチンの免疫原性を調べる
・末梢血中の低頻度な抗原特異的メモリーB細胞を検出する
がん免疫
がんを攻撃する細胞が増えているか、活性が上昇しているかを調べる

・特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の発現頻度を調べる
・樹状細胞ワクチン療法の免疫学的効果判定
・抗体医薬、遺伝子治療用ベクターの免疫原性の評価
自己免疫疾患・移植
・HCMV特異的 T および B メモリーリンパ球の存在を調べる
・中枢神経系 (CNS) 自己免疫疾患の免疫細胞の応答性を調べる
ELISPOTの利点
ELISPOTアッセイは、細胞を取り巻く直近の細胞環境で 刺激されたT細胞から放出されたサイトカイン(B細胞ELISPOTの場合は抗体)を検出します。T細胞はアッセイ中にキャプチャー用抗体でコーティングされたメンブレン上で培養されます。抗原(またはマイトジェン)を介して刺激すると、T細胞はサイトカインを放出し、その時点でサイトカインはキャプチャー抗体に結合します。
したがって、ELISPOTアッセイは、サイトカインが培地で希釈されてしまう、または分解されてしまう恐れのあるELISAやサイトカインビーズアレイなどの間接的なアッセイよりもはるかに高い感度で放出されたサイトカインを測定できます。
また、ELISPOTアッセイはフローサイトメトリーを使用した細胞内サイトカイン染色(ICS)よりも桁違いに高感度です。ICSでは細胞内にサイトカインを留めて検出する必要があり、そのための処理でダメージを受けた細胞を使用して行われます。したがって、ICSで検出されるサイトカインは必ずしも生理活性に関連があるわけではありません。
C.T.L.が提供するELISPOTアッセイプラットフォームであるImmunoSpot®アッセイでは、PBMCを使用して0.0001%という低い頻度の抗原特異的T細胞をも検出できます。
各種免疫モニタリング手法と比較したメリットとデメリット

※T細胞評価の場合
実験手法 |
メリット |
デメリット |
ELISPOT/FluoroSpot |
-単一細胞レベルでの抗原特異的細胞の存在頻度の同定
-細胞や細胞集団の放出活性を視覚的に判別
-多機能性細胞の検出(2種類以上のマルチプレックス解析にも対応)
-ハイスループットな解析(96wellプレートでn=3でも12ドナーを一括解析可能)
| -マルチプレックス解析の限界(最大4種類まで)
- 適合抗体ペアの必要性
-アッセイにかかる時間(細胞の培養に最低24時間必要など)
-放出された物質量の定量はできない。
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ELISA |
-シンプル
-幅広い市販キット
-ハイスループットスケーラビリティ/バッチ分析
-分泌物の定量的な分析
-短時間でのアッセイ |
-マルチプレックス機能なし
- 培養刺激中や培養液の移動により、分泌物の分解や希釈が起こるため、感度が低い
-分泌量の増減が陽性細胞数の増減か、それとも個々の細胞の放出活性の増減によるものか判定できない。
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ICS:細胞内サイトカイン染色 |
-マルチ分析検出/マルチプレキシング
- マルチパラメトリックな表面表現型解析に対応
- 機能的表現型解析 |
-分析物の検出に必要な、分泌の阻害(固定作業)による細胞へのダメージ
-高い細胞入力要件/検出限界(低いスポットはノイズと判断できない)
-限られたスループット/スケーラビリティ |
Luminex:サイトカイン多項目同時定量 |
-マルチ分析検出/マルチプレキシング
- ハイスループットスケーラビリティ/バッチ分析
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- 分解能/検出限界が低い
-培養刺激時に分析物が消費されるため、感度が低い。
-価格が高額 |
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